バンコク 泥棒市デジャヴ物語 ~パタウィコーン市場~
投稿日 2016.09.28
ナワミン通りにある超ローカル泥棒市場
片方だけの靴、無修正エロDVDなど他を圧倒する品揃えで名をはせる西成・釜ヶ崎の泥棒市。昨今はドヤ街も高齢化とあって一時の勢いはないようだが、以前訪問した折、ほとんどゴミ箱より産地直送!みたいな店があった。
「ねえちゃん、どやァ。スターの写真やでェ。100円」との声に素通りできないものを感じ、見せてもらうと、褪色して端っこが丸まったマイケル・ジャクソンのブロマイド。たしかにスターの写真である。おやじのピュアな売り口上に100円以上の価値を見出し、即購入した。
そんな釜ヶ崎とドア一枚で繋がっている市場がバンコクの郊外にある。くさい、汚い、危ないでおなじみのセンセープ運河ボートでドブ川を爆走し、途中バスとバイタクを駆使したところで都心部から片道1時間半かかる「パタウィコーン市場」は、規模でいったらタイ・カンボジア国境に広がるロンクルア市場より小さいが、カオス度は間違いなく上。中華街のクロントム市場をさらに片付けられなくした感じで、雰囲気は奴隷商人が行きかう辺境の惑星、タトゥイーンに似ている。
「子供」と分類された段ボールよりいでしゴミ
乗って回ってるうち冥界に連れて行かれそう
おやじと手作り将棋はもはやタイ名物 熱風吹き荒れる場内をわたあめ売りがゆく
触手が伸びないお宝の数々
リモコン山、謎コード山といった既視感ばりばりの遥かゴミ山脈を歩いていると、意外にも、木彫りの熊やこけし、おかんアートの成れの果て、といった日本製品が目に付く。二人の名前を彫りこんだハート型ミラーの引き出物からは参列者の苦悩が伝わってくるが、おそらく、日本のリサイクル業者から売れ残りをトン単位で仕入れ、転売可能なものはすでに抜き取ったあと。つまり、そのほとんどが精鋭のゴミたちだ。たまーに見かける、古銭やブリキの玩具といった真に価値あるものは妥当な値つけがなされているので、単なる客寄せアイテムと思われる。
私もジャンクハントの心得はある方だが、一日中しらみつぶしに回ってもマジ何もない、何かありそうでなさそうで本っ当に何もない。長時間釣り糸を垂らしていたら毒色の深海魚がヒットした程度の喜びはあるが、これも「個人的には」価値があるってだけのものだ。
リモコン山にはその人にとってはかけがえのないお宝が眠っているし、高僧が念を込めた(とされる)プラクルアンは、ある人には煤けた石だが、ある人には娘を売り飛ばしてでも入手したい逸品となる。ゴミ捨て場からやって来たスターの写真は100円どころかタダでもいらない人も多いだろう。
見渡す限りジャンクの海、圧巻なり
ブリキ製品は北原館長も納得の3500バーツ
イケメンと目があう。上はラブラブ引き出物ミラー
「定価メインの国」から「交渉メインの国」に来てよく考える。
お金の価値は世間が決める。でも、ものの価値は個人個人が決める。
では、私にとっての真の価値とは、経済とは……?
そんな自分探しすらホイホイ始まってしまうのは、容赦ない直射日光と、無計画に増殖させたテントのせいで風通しが異常なまでに悪くなっているからなので、特攻かけたいという物好きさんには、日傘や帽子での自衛を強くおすすめしておく。
文/万灯レイ子
[筆者プロフィール]
在タイ4年の人妻。趣味:フィールドワークという名の場末探訪。量産型ショッピングモールとおしゃれカフェに浸食される前に記録しておかねば。と謎の使命感を胸に日々徘徊。
2 件のコメント
泥棒市場と言えば「Charoen Krung (チャルンクルン)通り」が真っ先に思いつきますが、この様な王様があったとは驚きです。
綿菓子売りのクメール主人の笑顔が素敵で、辛党でもついつい買ってしまいそうです。
こんな場所に女1人で訪れている彼女に驚きです。