ビーチリゾートの裏側:パタヤのスラム事情を地元民に聞いてみた

タイ・パタヤ

タイ・パタヤと聞くと、ビーチリゾートやナイトライフといった観光地のイメージを持つ人も多いだろう。

では、その華やかなイメージの裏側には、どのような暮らしがあるのだろうか。バンコクのようにスラム街は存在するのだろうか? 疑問に思ったので、調べてみることにした。

パタヤにスラムは存在しない?

まず、現地の人に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「パタヤにスラム? そんなものないよ」

あまりにもあっさりした返答に、正直驚いた。バンコクにはクロントイのような有名なスラムが存在する。それに対して、パタヤではスラムがほぼ存在しないという話は本当なのだろうか。

結論からいうと、パタヤにも「スラム的」といえる場所は存在する。しかし、バンコクのような大規模で誰の目にも明らかなスラム街は、ほとんど存在しないといわれている。

たとえば、パタヤ・クラン(セントラルパタヤ)の裏道や国鉄線路沿いの一部、パタヤ・クランを脇に入るソイ・アルノタイ、サウスパタヤから近いソイ・コーパイなどには古い仮設住宅や簡素な住居が点在している。

ただし、それらは局地的で規模も小さく、「ここ一帯がスラムである」と断定できるほどではない。そして、スラムの定義とはかけ離れている印象だ。

そもそもスラムの定義とは

ソイ・アルノタイのバービア街。周辺はバービアの女の子が暮らすアパートが並ぶ

国連の定義によれば、スラムとは「上下水道や電気などのインフラが不十分」「不法占拠である」「建物が脆弱」「過密状態である」といった条件が複数重なっている地域を指す。

パタヤ郊外にも、上下水道や電気が十分に整っていない仮設住宅が存在し、公共サービスが追いついていない場所も確かに存在するという。しかし、それらは規模が小さく、人口密度も高くない。そのため、建物が古かったり、野良犬が多かいこともある。だが、それだけではスラムとは言い切れない。

パタヤ出身の男性に話を聞いたところ、「安っぽいバラックのような家はあるが、バンコクのクロントイのように“完全にスラム”という印象ではない。普通に生活している人が多い」と話す。

ルームシェアすれば安く部屋を借りられる

イースト・パタヤにある公営住宅。家賃は5500バーツほどだそう

外国人の長期滞在者も多いジョムティエン・ビーチエリアに住むタイ人女性は、こう話す

「家賃がそこまで高くないため、お金がなくても普通にアパートを借りられる。だから、バンコクのように貧しい人々が一か所に固まって暮らす必要がないのではないか」と話す。

実際、パタヤではルームシェアでワリカンをすれば、クロントイ・スラムの簡易住居と同程度の家賃水準で部屋を借りることができる。一人当たりの負担は1500〜2000バーツほどで、2人で住む場合でも月3000〜4000バーツ程度に収まる。

しかも住環境はスラムではなく、ごく一般的なローカル向けアパートであるケースも多い。

筆者が以前住んでいたローカルアパートも、外国人向けの家賃は7,500バーツだったが、タイ人向けは4,000バーツだった。地方から出てきたタイ人の夜職の女性同士や、カップルで借りている住人が多かった。

そのアパートは新築でWi-Fi無料、通信速度も早かった。このような最低限の設備が整った住居を比較的安価に借りられる環境が、パタヤでスラム化が進みにくい要因の一つになっている可能性は高いといえるだろう。

しかし一方で、アパート周囲には「野良犬注意」の看板があったり、平日の昼間に子どもが外で遊んでいる様子を見かけたりすることもあった。道端にゴミが残っていることもあり、日本の基準で見ると生活環境に違いを感じる場面もあったのだ。

パタヤでスラムが目立たない理由

富裕層向けのコンドミニアムが並ぶプラタムナック・ヒル

パタヤには富裕層向けのエリアも存在するが、そこに住んでいるのは主に外国人だ。一方で、街全体を見ると中間層が分散して居住しており、貧富の差が一か所に集中して可視化されにくい。この点も、スラムが目立ちにくい理由の一つだろう。

また、パタヤは「特別自治市」として扱われており、観光地としての街づくりや開発を比較的自由に進められる立場にある。パタヤ・ノイ、パタヤ・クラン、ナクルア、ジョムティエンといったエリアを一体的に管理しており、こうした自治権の強さも、観光都市として成長してきた背景である。

さらに、パタヤでは2026年に世界最大のEDMイベント「Tomorrowland(トゥモローランド)」の誘致に向けた都市整備も進められている。

最近では、ジョムティエンビーチエリア・セカンドロード沿いにあった林が、ホームレス対策の一環としてすべて伐採された。「Tomorrowland」の開催に直接関連するかどうかは不明だが、街の景観や治安を維持するための対策が確実に進んでいることは間違いない。

今後の課題

もっとも、問題が存在しないわけではない。不法滞在者や身分証を持たない非公式な居住者、インフラが十分に整っていない地域など、表に見えにくい課題は確実に存在する。

近年、パタヤの家賃や地価は上昇を続けている。この流れが続けば、住む場所を失った人々が新たなスラムを形成する可能性も決してゼロとはいえない。

まとめると、パタヤには「スラムのように見える場所」は存在するものの、バンコクのように誰が見ても明確にスラムと分かる大規模な地域は、現時点ではほとんど存在しないといえる。

観光地の表面的なイメージにとどまらず、実際に歩き、街の人々と接してみることで、初めてその土地のリアルが見えてくる。パタヤも例外ではない。

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