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- [連載]タイの考察 〜オンナとタカダと、時々、チョメチョメ〜
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第22回「チェンマイで出会ったリス族 モーという女」
投稿日 2018.12.19
タイの美人の産地はチェンマイだと言われる。
タイに限らず、どの国でも北が美人の産地とされる。
ベトナムならハノイや中国国境に近い省だと言われるし、ラオスでも北の地域が美人だとされる。
日本だって秋田や北海道がいいと言われる。
こうなると、ロシアとか北欧、アラスカ辺りが世界的な美人の産地になるのではないかと思う。
そんなチェンマイのナイトライフは実に楽しい。
バンコクよりもずっと安いし、女の子もかわいらしく、性格は素朴だ。
なにより、山岳少数民族の女の子たちと触れあうことができる。
ここではそんなチェンマイのビアバーで出会った、モーという女の子との思い出を話したい。
リス族が日本人に人気の少数民族
ご存知のようにタイ北部は山々に囲まれている。
そして、かつて中国方面から南下してきた民族がタイ人となったが、その中で山々に残って、今も昔と変わらない生活をしている部族がいる。
そういった少数民族たちはかつてはタイ人に蔑まれる存在だった。
戦後は中国の国民党の残党がコミュニティーを形成し、黄金の三角地帯では麻薬の栽培などが行われるなど、政府としても見守ってあげられる存在でもなかった。
しかし、最近は変わってきていて、山岳民族も普通にチェンマイ市内で働いているし、その一部はビアバーなどの夜の店で働いている。
少数民族の子どもたちもタイの学校に通っているのだが、生活上はその民族の言葉を話すため、我々日本人のようにタイ語の発音がやや変である。
ただ、これがタイ語ができる人にはわかるのだが、女の子などは舌っ足らずな感じに聞こえるので、実にかわいらしい。
その中でもリス族の女の子は話し方がかわいいし、中国人っぽい顔立ちと肌の色なので、色白で美人な女の子が多い。
オレはリス族ファンになってしまって、とりあえずチェンマイのロイクロー通り(ガイドブックなどではロイコー通りとも表記される)のビアバーなどに行くと、キミはどこの子? と訊いてから女の子を選ぶようになった。
ちなみに、山岳少数民族は「チャオカオ」という。
山の人といった意味合いになる。
もうひとつ豆知識に。
リス族は生まれた順でつけられる名前が決まっている。
女の子は長女がアミマ、次女はアレマ、三女にアサマ、四女だとアスマという名前になる。
リス族もタイ文化と同じようにニックネームをつけるが、本名を見るだけで何番目に生まれた女の子がわかるのだ。
リス族の女の子とドラマみたいな展開になり
ロイクロー通りのビアバーでたまたま座って、たまたま隣に来たのがモーというリス族の子だった。
その店は複数の民族がいた。
ほかにはアカ族とラフ族だったろうか。
当時モーは21歳と言っていた。
リス族では行き遅れの部類に入るそうだが、見た目は18歳前後の本当にかわいい女の子だった。
モーは控えめで、アルコールも飲まない。
奢っても奢ってもソフトドリンクのみ。
最終的に店の女の子全員に何杯も奢ったが、会計が2,000バーツもいかない程度と安かった。
このがっついていないところにも好感が持てた。
その翌日もモーのところに行き、酒をしこたま飲んだ。
向こうもオレのことを好きだと言った。
このままチェンマイに移り住んでもいいかもしれない。
そんなことが頭をよぎる。
ところが、チェンマイのビアバーは基本的に連れ出しができないということもあったが、それだけでなく、モー自身が身体を売ることをよしとしなかった。
好きだと言ってくれているのだから、金を介在させずにやらせてくれてもよさそうなものだが、それもダメだと言った。
「ワタシたちはまだあまりお互いを知らないからそれは早い。それにもしそういう関係になりたかったら、その前にエイズの検査を受けて」
かつてはタイ北部の女性の中で、特に少数民族の女の子たちはバンコクなどのマッサージパーラーに売り飛ばされてしまい、そこで性病やHIVに感染してしまうという事例が少なからずあったそうだ。
そういったことと、オレと知り合ったのがビアバーだから、まだまだオレを信用しきれないようであった。
まあ、独身と思いっきりウソを吐いていたので、オレもうしろめたさもあって強引に口説かなかったけれども。
この古風な感じが素人感満載で、オレも滞在中にかなり好きになり始めていた。
最後の夜は、いつもは店先までの見送りが、道路の少し先まで来てくれた。
ちょうど小さな小川に架かる橋の上だった。
そこでオレとモーは軽くくちびるを重ねる。
なんかドラマみたいだ。
真剣にバンコクとチェンマイの二重生活を考えてしまった。
いい思い出はそのままにしておいた方がいい
それから残念なことに北部での仕事はなかなかできず、次にチェンマイに行ったのは2年が過ぎてからだった。
到着したその夜に、モーがいた店に行った。
当時はまだスマートフォンだってそれほど普及していなかったし、そもそも彼女は出会ったときには携帯電話も持っていなかった。
だから連絡の取りようがなかったし、タイ人によくある長続きしない性格であれば、彼女はもうそこにはいないだろう。
また、リス族は婚姻の際には多額の結納金を新郎側が用意しなければならないそうだ。
そのため、リス族の男性は結納金が払えずにほかの部族と結婚することもよくあるのだとか。
そうなると結婚できないリス族女子も出てくるわけで、そうすると高額の結納金が期待できる外国人との結婚を目論む家族もいる。
ビアバーは主に白人が多く、ケチな飲み方をするわりには意外に金を持っているじいさんも少なくない。
だから、モーがそういった男に傾いていたら、そのときもまた彼女はビアバーを去っていることだろう。
しかし、モーはそんな子ではない。
きっと、オレのことを待っていてくれる。
そう信じたし、でもいないだろうなという気持ちもあった。
そんな心配をよそにモーはいた。
べろっべろに酔っ払って。
「ああ! タカダ!」
別人かと思ったが、ちゃんと名前も憶えているし、顔もモーではある。
舌っ足らずな喋りは変わっていなかった。
隣に来るなり、ドリンクを頼んでもいいかと訊いてきた。
いいと言うと、頼んだのはアルコールの強いカクテルだった。
ここでさすがのオレも、あれ? となる。
前は酒は飲まなかったはずなのに。
よく顔を見ると肌荒れもひどい。
たった2年で見た目が25歳くらいになっていた。
老け方が半端ないではないか。
モーは結婚の話を憶えていて、性病検査を受けたらすぐに婚姻届を出しに行こうと言った。
しかし、すぐさま「このあとディスコ行こうよ」とも言った。
友だち呼ぶから3人で、とつけ加えるモー。
これはたかられるコースだ。
なんだかがっかりしてしまって、オレはそのまま退散した。
ディスコは後日行こうということにして。
その後取材でチェンライなどに行き、バンコクに戻る最終日。
再びオレはモーに会いに行った。
あまりの変貌に、オレが見間違っていただけではないのかとさえ思ったのだ。
しかし、店に着くなりモーは「ディスコ行くって言ったのに、この大ウソ吐き!」と盛大に罵ってきた。
夢は夢のままが一番なんだな。
それ以来ロイクロー通り一帯のビアバーには足を運んでいない。
【プロフィール】
高田胤臣(たかだたねおみ)
1977年東京都出身のタイ在住ライター。
1998年初訪タイから2006年に結婚するまでにゴーゴー嬢、タニヤ嬢、マッサージ嬢など夜の女の子と一通りつきあい、タイの低所得者層から中流層の生活を垣間見てきた。
著書に「バンコク 裏の歩き方」や「東南アジア 裏の歩き方」など彩図社の裏の歩き方シリーズ関連、Amazon Kindleの電子書籍など。
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