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第8報「ホーチミン“泣き笑い”エピソード集。ハプニング/ミステイクから知る(?)ホーチミンの“今”。」
投稿日 2018.04.29
ベトナム・ホーチミンにはGIA取材/視察を含めて、この二年半で7回も出入りを繰り返している。
平たく言えば、筆者はホーチミンに魅せられているのである。
その要因を総括してみると、様々な魅力に憑りつかれながらも、毎回必ず何らかのアクシデントや自分のミステイクが起こる事なのかもしれない!(第7報の「幻のジャコウネコ珈琲探し」の体験も然り)
漫然と「楽しかった」「貴重な体験をした」ではなく、旅慣れていると思い込んでいた自分が、ある時には初心者のように立腹したり、困惑したり、恥ずかしくなったり、ホーチミン滞在期間が平穏無事には終わらないことが、この街への好奇心をそそり続けているのかもしれない。
これからご紹介する筆者の“泣き笑い”エピソードは、ホーチミンに限って起きることではないが、筆者の感情が少々揺れ動いた小さな事件からホーチミンの偽らざる現状の一端を垣間見て頂きたい。
目次
タンソンニャット空港編
「なんで陸路なんだ」「バスって何だ?」と威嚇するイミグレ係員
ベトナムに空路でノービザ入国する際は、空港のイミグレにて出国用のエアチケットの提示が義務付けられている。
これはタイと同様に表向きの規定であり、筆者はチケット提示を求められたことがなかった。
しかし昨年末の入国の際、初めて強要された。
陸路でカンボジア・プノンペンに抜ける予定だったので、エア・チケットがあるはずもない。
「陸路でカンボジアへ行く」「バス・チケットはホーチミン市内で買う」とイミグレ係員に何度も伝えたが取り合ってくれず、係員はやがて「なんで陸路なんだ」「バスって何だ」「出国用チケットを見せろ」と机を叩いて怒り出す始末。
これはマズイ、しぶとく食い下がらずに三十六計逃げるに如かずだ。
仕方なくアライバルビザ申請を考えたが、ビザ取得の為のインヴィテーションレター(招聘状)が無い。
この場でネットでエアチケットをリザーブも頭をよぎったが、運悪く空港のフリーWi-Fiがまったく繋がらない。
少々思案した末、約10ヶ月前にホーチミンからカンボジア国境を陸路で越えた時(モックバイ経由)にパスポートに押されたイミグレのスタンプ(下写真参照)を見せて、「今回もここを通ってカンボジアに行きます」とあらためてお願いしたところ、係員は渋々入国スタンプを押してくれた。
タンソンニャット空港の入国イミグレーションは、時としてやたらと順番待ちが長いが、こんな揉め事も原因のひとつか?
皆様も出来れば、ベトナム・ノービザ入国/陸路出国のパターンは避けられたし。
空港職員と白タクがグル!?
空港から市内への交通機関は、筆者の場合はアライバルゲートを出てバス発着場所右端の停留所から「109番」のバスを利用する。
バックパッカー街フォングラオ通りに面した9月23日公園バスターミナル(終点)まで約50分、料金20,000ドンである。
予約した宿がベンタン市場周辺なら、9月23日公園バスターミナルの約800メートル手前にある市場が終点の「152番」。
料金は5,000ドンと格安!(荷物が多いと倍額請求されるから要注意)。
ところが今年年初にホーチミンを訪れた際、「109番」の停留所前に係員(チケット販売係)が一人もいない。
やがて横のタクシー乗り場で客を捌いていた空港職員とおぼしき者が近づいてきて、「今日はバスは休みだ」「代わりの乗り合いバンの乗り場まで案内する」と言う。
バン乗り場はすぐ近くだったが、待っていたバンの運転手は「一人80,000ドン」と言う。
どう見てもコイツは白タクの部類だ。
乗車を断ってバス乗り場に戻ると、10分ほどして係員2人がやって来た。
食事に行っていたそうだ!
2人揃って持ち場を離れるとはなんともいい加減な職務態度だが(笑)、やがてバスが到着して無事乗車。
「バスは休みだ」とのたまわった空港職員は、白タクとグルだったということだろう。
フォングラオ/ブイビエン通り編
フォングラオ/ブイビエン通りは、ガイドブックでは「昔ながらのバックパッカー集結地」として紹介されている。
しかしバックパッカーを「低予算長期旅行者」と狭義した場合、今やこのストリートは彼らにとっては必ずしも都合の良い場所ではなくなってきている。
周辺には安宿の数こそ多いものの、高価な飲食店やディスコ&クラブが増えて、バックパッカーというよりも、予算の多い短期旅行者やツアー団体客向けのオシャレなストリートへの変貌のスピードがアップしているのだ。
タイに例えると、カオサン通りがパッポン通りに変わりつつあると言えばお分かり頂けるか!?
時代の流れだろうが、その一例をご紹介しておこう。
増え続けるポン引きとたちんぼ嬢、強引なマッサージ嬢
金持ち旅行者が増えると、ほぼ例外なく群がってくるのは闇の風俗関係者たちだ。
2~3年前までは想像も出来なかったほど、驚くほどポン引き、もしくはたちんぼ嬢が多い。
視察気分(?)で何度かポン引きに付いて行ったが、連れ込み宿で提示される手数料や部屋代はポン引きの言い値の3割増しなんて当たり前。
帰ろうとすると、女の子やポン引きが抱きついて阻止してくる(スリ兼業?)から面倒だが、まあ昔の郊外の置屋ではこんな事は当たり前だったな。
それがフォングラオ/ブイビエン通りからほど近い所で頻発している事自体が驚きなのである。
何の変哲もない店構えなのに、呼び込みの激しいマッサージ店も増えた。
激しいのは呼び込みだけでなく、マッサージルームで「1,000,000ドン(約5,000円)払ってから“ワタシをヤレ”」と迫ってくるマッサージ嬢も少なくない。
丁重にお断りしても「ママに今月○○ドン払わなきゃなんないから、とにかく払え、脱げ、ヤレ」などと喚き散らす嬢に当たっただけに、性悪風俗横行の印象が強烈だ。
まあ上述の被害未遂こそ喰らったが、オモシロイのはポン引き、立ちんぼ嬢、質の悪いマッサージ店は、二、三ヶ月経つとドロンしていて、別人が出現していることだ。
皆さん、代わるがわる悪さをしてから行方をくらます手口が繰り返されている。
さらば、愛しの安ビール屋
この通り周辺を最後に訪れた今年2月時点においては、長らく筆者が贔屓にしていた安いビールが飲める店3件は一斉値上げしてしまった。
それまではサイゴンビール(中瓶)1本12,000ドン(約60円)だったが、現在は17,000ドン(約85円)に。
15,000ドンだった店は20,000ドン(100円)となり、その他大勢の店と大差ない価格だ。
いずれの店も、以前は愛想の良い顔なじみの従業員がいたものだが、彼らもまた一斉に姿を消した。
安ビールが売りの店だっただけに、彼らの使命は1本でも多くオーダーを取ること。だから接客態度には感心するほどの努力が見られていただけに、大変に残念だ。
もっとも足繁く通っていた店の男性従業員と、昼間にばったり路上で出くわした。
今は別の店に移ったという。
聞けば、以前の店は大繁盛していたが、客入りの悪い周囲の店から嫌がらせを受け、オーナーが店を手放してしまったらしい。
「マリファナをやる客の溜まり場」「女性従業員が“客をとっている”」等のあらぬタレコミをされて身に覚えのない手入れを喰らったりしていたとのことだ。
飲食店密集地ではよく聞く話ではあるが、他の2店の値上げの原因も追究してみたくはある。
郊外編
ド不味いエスプレッソ珈琲の波状攻撃
珈琲天国ベトナムだけに、ホーチミンには無数の路上カフェ、数多くのハイセンスな喫茶店があって珈琲好きがカフェ巡りをするには恰好である。
筆者は、まずベトナム人学生や外国人旅行者に大人気という「W」なる店に行ってみた。
Google-Mapのレビューが素晴らしかったからだ。
日当たりが良く、ベトナム人画家たちの作品がディスプレイされた洒落たインテリアは、この店の人気の高さが伺える。
残念ながら大好きな「ジャコウネコ珈琲」はメニューになく、代わりにもっとも高価な1杯80,000ドン(約400円)のエスプレッソをオーダー。
ところが本来濃厚な珈琲が小さなカップに注がれて出されるはずのエスプレッソが、レギュラーサイズのカップにたっぷりと?しかも表面は泡立っている??
ひと口飲むと、筆舌に尽くしがたいほど超絶不味い…。
あえてその不味さレベルを表現すると、焼きそば用粉末ソースをラーメンスープにしたというか、激薄しゃばしゃばカレーというか、激薄エスプレッソがここまで不味いとは知らなかったゾ。
気を取り直して、もう1件の話題の珈琲店「T」へ。
炎天下の中で歩き回って喉がカラカラだったので、「アイス・エスプレッソ」をオーダー。これまた激マズ…。
両店とも、まるでエスプレッソの淹れ方を知らない店員が、レギュラー珈琲と同じ手法で淹れたとしか思えず、しかもエスプレッソの味がしない。
最近は世界的に濃い珈琲は敬遠されがちであり、日本でも薄めのエスプレッソが流行しているようだが、お味はとりあえずエスプレッソ。
しかしベトナムでは、珈琲天国とはいえ、輸入珈琲の基本知識が浸透していないのであろうか。
ビール3本で50,000,000ドン(250,000円)!?
ベトナムの通貨ドンは、とにかく金額の桁数が多くて慣れるまで結構アタマが混乱する。
「円換算はゼロを2つ取って2で割る」(100,000ドンならば大体500円)と分かってはいるが、瞬時に暗算出来ない時もある。
特に酒が入ると暗算が面倒になる(笑)
そこで、数あるホーチミンのハプニング/ミステイクの中で、マックス焦ったエピソードを!
通常ベトナム人は外国人客に対して金額を伝える際、4ケタ以上の数字を英語で言う。
10,000ドンなら「テン(10)」、50,000ドンなら「フィフティー(50)」、100,000ドンなら「ワンハンドレッド(100)」。
正確な言い方はその後に「サウザンド(1,000)」が付けるが、それを省略する人が多い。
或る晩安酒場でしこたま飲んでもまだ飲み足りなくて、繁華街の裏通りを徘徊。
やがてセクシーなオネエサンに導かれて一件の妖しいバーへ入った時のこと。
ビール3本飲み干してからお勘定を頼むと、バーテン君は「フィフティー・サウザンド(50,000)」と言った。
筆者は驚いて大声を上げてしまい、慌ててスマホの計算機で50,000に1,000を掛けた。
液晶表示は「50,000,000ドン(250,000円)」だ。
かつては外国人旅行者にボリまくることで悪名の高かったベトナムだし、この店はオネエサン付きだから少々覚悟はしていたが、これはあまりにも度が過ぎている!
激しく動揺する筆者に、ベッタリ寄り添っていたオネエサンは不思議そう。
やがて筆者のスマホを覗き込んで大笑い。「ノーノーノー、オンリー・フィフティー・サウザンド!」。
要するにバーテン君は1,000を省かずに末尾の数字まで含めた正確な表現で金額提示をしただけ。
冷静に状況を把握出来ずに常識外れな判断をする、貧乏人の酔っぱらいはこれだから嫌だ!(笑)
ゲストハウス編
二度も喰らった南京虫大被害
どこの国を旅しても、衛生上の問題を懸念して最安値の宿(一泊5ドル前後)に泊まることは避けているが、それでもホーチミンで二度も酷い南京虫にやられた。
いずれも一泊10~12ドル、日本人旅行者も数多く利用している数年前に開業した宿である。
内1件は同じドミトリー利用者4人、別のドミトリー利用者2人が同時に南京虫にやられた。
数多くのイボ(南京虫の噛み傷)でボコボコになった腕を見せて宿の従業員にクレームを入れると、「あぁ、社長に言っておきます」「別のベッドに移動しますか」程度の対応。
こんな衛生管理状態、営業姿勢でよくもまあのうのうと営業が出来ているものだ。
従業員をあらためて見ると、彼らの腕や脚にも同じような傷跡が見える。
ベトナム人は気にしないのだろうか?
南京虫被害の症状とは、まず噛まれた箇所が強烈に痒くなって赤く膨れ上がり、やがて倍の大きさに腫れて固いイボ状態になる。
大概は一ヵ所だけでなく、大きな帯状疱疹の様に数か所連続して腫れて(イボ化)しまうのだ。
飲酒や入浴などで体温が上がると猛烈に痒みが増し、体質によっては完治するまで(イボが消えるまで)一ヶ月ほどを要する。
筆者は予めタイの薬局で飲み薬を買っておいたが効果なし。ホーチミンの薬局で買った塗り薬も痒みが収まるだけ。
結局もっとも効果が強ったのは「タイガーバーム軟膏(クールタイプ)」。
広い患部全体がベットべトになるまで塗りたくり、小瓶(19g入)を数日で使い切るまで徹底して塗りまくってようやく三週間後にイボが消えるに至った。
被害に遭った2件の宿は、いずれも館内は清潔そうに見えたが、チェックイン時にベッドシーツ、枕カバー、タオルを渡されたのが問題だ。
つまりベッドメイキングはセルフ・サービスであり、従業員がベッド周りをチェックしていないのだ。
この手の宿は充分に注意されたし。
ホーチミンに行くなら「うさぎやゲストハウス」へ
最後に幸運な出会いをひとつ。
上述の通り二度も南京虫被害に遭った為、その後のホーチミンの宿探しに憂慮したのは言うまでもない。
そんなある日、マレーシア・クアラルンプールの安宿で1日だけ一緒になった日本人旅行者から薦められたのが「うさぎやゲストハウス」。
2017年夏にオープンしたばかりのピッカピカの日本人オーナー経営のゲストハウスである。
紹介して下さった方が旅の初心者だったので、失礼ながら当初は彼の賞賛を真に受けなかったが、ホームページを確認すると、なんと「南京虫対策」を怠らない趣旨の文言が大きく掲載されていた。
もうそれだけで信頼度急上昇!災い転じて何とやらで、迷うことなくネットでリザーブ。
場所はフォングラオ通り西端から北西へ10分ほど歩いた住宅地の中にあり、周囲はとても静か。
4階建てのゲストハウス内にはシングル・タイプ、ツイン・タイプ、ドミトリータイプが用意されており、筆者が利用したドミトリーのある4階には人工芝が敷かれた大きなベランダもある。
1階は共有スペースで、日本のTV番組が観られる大きなモニターが設置され、TVゲームや漫画も常備されている。
オーナーはバックパッカー歴20年という石田氏。
その経歴を物語っているのが、館内の徹底した清潔さとドミトリーベッドの構造。
ベッドはセミダブル・タイプで、枕元周囲には間接照明、折り畳み式の棚があり、足元には鍵付きのロッカーが設置。
世界各地のドミトリーを泊まり歩いて来た筆者にとって、もっとも使い勝手の良いドミトリーベッドである。
ドミトリー室内には二つのトイレとシャワールームがあり、いずれも毎日清掃されていてオープン当初の新しさが保たれている。
バスタオルの交換も毎日行ってくれて、洗濯も宿泊3日以上ならば無料。
ベトナム人の女性従業員たちもフレンドリーでホスピタリティに満ちており、これは石田オーナーの従業員教育の賜物であろう。
彼女たちが作ってくれる朝食のサンドイッチやフォー(ベトナムの麺料理)も美味しい。
外出する際のバイクやタクシーの手配も彼女たちは快く応じてくれる。
各種ツアーやビザ代行業者への取次もOK。
またゲストハウス内で販売されているビールや飲料水はすべて市価と同額であり、両替も時価で応じてくれるという気持ちの良いサービスぶりである!
館内全室冷房完備、無料Wi-Fi可。
キッチンに冷蔵庫、電子レンジ、調理器具とガスレンジ有。
レンタルバイク、レンタルスマホ、安全格安マッサージ案内可。
その他詳細はホームページにて確認されたし。
東南アジアのゲストハウスは、一族や家族による経営が多い。
館内の構造やサービス、従業員たちの仕事ぶりにゲストハウス側の都合や勝手が優先されている場合が殆どだ。
しかし「うさぎやゲストハウス」は「どうしたら宿泊者がリラックスできるか」が考え抜かれたゲストハウスであり、その方針がゲストハウス館内の隅々に浸透している。
今後益々の繁栄を期待したい。
<うさぎやゲストハウス>
■アドレス 189B/A26 Cong Quynh phuong Nguyen Cu Trinh, Quan 1, Ho Chi Minh City, Vietnam
■電話番号
・ベトナム国内から 0120-738-7023(ゲストハウス・日本語可)
・日本から(国番号不要) 050-5873-5234(日本人直通)
・日本から(国番号要) +84 120-738-7023(ゲストハウス・日本語可)
■HP http://usagiyah.com/
以上。
【筆者プロフィール】
神中(ジン・アタル)19〇〇年東京都生まれのフリーライター。
「金ができたら旅、金が無くなれば仕事」をひたすら繰り返す渡世人。
旅のモットーは「旅は独り旅に限る」「酒とタバコが美味ければ何処にでも行く」。
お気に入りの都市は、ブダペスト(ハンガリー)、ハンブルク(ドイツ)、ドトスサントス(メキシコ)&バンコク。
日本とアセアン諸国でメディア編集者歴25年。
憧れの作家はイアン・フレミング(映画007シリーズの原作者)、レイモンド・チャンドラー。
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