第4回「風俗初潜入雑記“怖がらずにいらっしゃい”」~20年前のバンコク・プライベート・ダイアリー~

投稿日 2018.08.22

バンコク風俗初潜入

今回は筆者がカオサンの宿「CH2」の仲間の“オススメ”により、色んな“女遊び”“夜遊び”を始めた時の記述を紹介します。
結末がどうであれ、筆者は明らかに20年前の“レディ・バンコク”に翻弄されている模様です!

【日記/(匿名)】
【構成、注釈、写真/志賀健(GIA捜査官)】

【7月23日(木)】尻込みして墓穴、冷気茶室初体験

うだるように暑い午後、過日タイ人女性とのトラブルを鎮静してやったT氏がお茶を誘ってきた。
チャイナタウンの冷房の効いたおもしろい喫茶店で中国茶を飲もうと言う。
迷惑をかけたお詫びにタクシー代とお茶代を出すからと、T氏は含み笑いを浮かべながらしつこく誘ってくる。
おもしろい中国茶って、小さな茶杯や茶壷のセットで淹れてくれるヤツか。
色んな茶葉の中から選んだりも出来るのだろうか。
チャイナタウンはあまり印象が良くないので験直しになるか等と考えていると、タクシーは先月宿泊していたニューエンパイアホテルの前で停車した。

こんな所に喫茶店があったか?
ニューエンパイアホテル横、「新三羊新興茶室」と看板の掲げられた建物の急な階段を上がると、そこは古い病院の待合室みたいな踊り場が広がっていた。
どう見ても喫茶店じゃない。
T氏はニヤニヤしながら俺に300バーツ、そしてコンドームを渡しながらようやく「茶室」の正体を教えてくれた。

【注釈】
冒頭の“タイ人女性とのトラブル”に関してはは、当コラム「第3回/こちらカオサン横トラブル相談所」参照。
チャイナタウン宿泊期間は、「序章」「第1回/夜のチャイナタウン」内参照。

【注釈】
俗にいう茶室(冷気茶室)とは、形式的に中国茶を淹れてお客をもてなす置屋の総称であり、新三羊新興茶室は2016年まで営業していた冷気茶室の代表店。
また、当時タイ製コンドームは粗悪品と思われていて、日本人客は日本製コンドームをよく持参していました。

ヤワラートの冷気茶室

「ここはですね、お茶飲みながらマッサージを受けるトコです。部屋で待っていると女たちが次々にやってきますから誰か1人を選んで下さい。マッサージだけなら1時間50バーツ。ヤリタクなったら200バーツ、まあ格安置屋ですね。コンドームは俺の日本製のヤツを使ってください」

男性従業員に案内された部屋は、シングルベッド一つが辛うじて収まる狭さであり、天井も低くて鶏小屋みたいな息苦しさだ。
5分もしないうちに若い女の子たちが次々と扉を開けてアピールしてくる。
単独でひょいと顔を出す子もいれば、3~4人でじゃれ合いながら部屋に入って来る子たちもいる。
容姿はともかく、彼女たちの中高生のような若さにたじろいでしまって逃げ出したくなったが、4番目に顔を出した少女の後ろにいたオバサンが「I like you!」と大声を上げながら少女を押しのけてベッドに座り込んでしまい万事休す・・・。

ヤワラートの冷気茶室

傘の骨みたいな痩せこけた身体をピチTとスリムパンツで締め上げたオバサンの顔は、白粉塗りたくりの妖怪のお面そのもの。
オバサンはマッサージの途中、丸いブリキのお盆に乗った中国茶セットを運んできてお茶を淹れてくれた。
急須の中のお湯を茶壷に注いでから、茶杯を被せた香杯をひっくり返すまでの一連の動作はおもしろかったが、セット自体が汚くて飲めやしない。
4つある茶杯から溢れ出てお盆の中に溜まったお茶まで飲んでしまったら、赤痢かコレラにでも罹りそうだ。

マッサージはそこそこ上手なオバサンだが、皺だらけの茶色の手を何度も下着の中に入れてくるから、その都度払いのけるのが億劫だ。
ひんやりとがさついたオバサンの手は、触れられるだけで気色悪い。
不意に隣りの部屋から、T氏の大きな呻き声とともに若い女性のけたたましい笑い声が聞こえて来た。
知り合い男性の“イキ声”なんざ聞きたくもなかったぜ!
オカゲサンで“俺自身”は一向に元気にならず、オバサンは攻撃を諦めてくれた。
チャイナタウンでは“肝試し”ばかり喰らうが、これはバンコクのどす黒いフェロモンってヤツなのかもしれない。

【注釈】
20年前の「冷気茶室」の相場は諸説様々であり、文中のマッサージ代、本番代は少しボラレ気味(?)。
当時は10代の女の子が多数在籍していましたが、2015年に訪れた際は建物2階の踊り場に用意された長椅子に年増の娼婦がズラリで、さながら高齢者用病院の待合室でした。

【7月25日(土)】貰いタバコの罠!失態で終わったゴーゴーバー初連れ出し

ナナプラザのゴーゴーバー

ナナプラザ2階「Gスポット」で初めてゴーゴー嬢を連れ出してみた。
4階にある「ヤリ部屋」は利用料250バーツ、「冷気茶室」よりはまともな部屋ってレベルだ。
お戯れの前の一服をしていると、彼女がピッタリ寄り添ってきた。

「それ、日本のタバコ?」
「そうだよ。日本人の友達からもらったんだ」
「タイのタバコは吸わないの?コレ、トライしてみる?」

彼女はハンドバッグからKLONGTHIPというタイのタバコを取り出して1本薦めてきた。
断る理由もないので頂いてみると、タバコ本体の葉の詰まりがスカスカなのに、結構キツくて妙にいがらっぽい。

「それ吸ったらシャワーね。早く全部吸っちゃって」

妙な薄ら笑いを浮かべながら彼女は全裸になり、俺の脱衣を手伝った後に一緒にシャワー。
彼女の一連の動作はやけにスローだが、「さっさと済ませてさっさと帰って」な態度よりはマシだろう。
KLONGTHIPを吸い終わってから20分ほど経過しただろうか、前戯の最中に身体が重たくなり、頭の中が朦朧としてきた。
つま先や指先は冷たくなり、彼女の吐息や衣擦れの音が大きく聞こえてくるようになった。

注意が必要

やがて身体が動かせなくなった俺は、彼女の横で仰臥するしかなかった。
おかしなことにナナプラザ全体の騒音までがガンガン聞こえてくる。
まるで全身が耳になった様だ。
枕元を照らす間接照明が異様に眩しく、光の中で彼女の顔だけが鮮明に見える。
ご機嫌なようで嘲笑しているようでもある彼女を凝視していたある瞬間、ようやく事態に気が付いた。

「シマッタ。マリファナを吸わされた」
「ヤバイ。持ち金を盗まれるかもしれない」

突然の危機感に襲われ、力を振り絞って起き上がったものの勢い余ってベッドから転落、サイドテーブルにしこたま頭を打ち付けた。
脳みそが発信する意志が、身体動作に正確に反映されていない感じだ。
それでも頭部に痛みはなく、痺れがさざ波の様にジワジワと頭の中に広がってくる。
彼女がしきりに声をかけているが、その言葉が理解出来ない。

その後、ヤリ部屋の中で何が起こったのだろうか?
やや正気に戻った時は、「レインボー1」前のバービアでコーラを飲んでいた。
時計を見ると「Gスポット」に入ってから3時間ほど経過しており、ポケットの中には500バーツほど残っていた。
宿を出る前に必要最小限の3,000バーツだけをポケットに入れたはずだ。ショート1,500バーツを彼女に払ったようで、残金の計算は合っている。
多分ヤッテはいないが、それでもショート代を払ったのはバカバカしいものの、マリファナ酔いの心地良い余韻のせいか、彼女の「偽装タバコ作戦」(?)に腹も立たなかった。

そのままバービアで夜風に吹かれていると、白人のジイサンを連れた彼女が目の前を横切って行った。
昂然としたその後姿を眺めていたら、彼女に支えられながらバービアに辿り着いた記憶が蘇ってきた。
情けねえ・・・俺の完敗だ。

【注釈】
マリファナを初め、全てのドラッグ所持や使用は今も昔もタイでは大罪ですが、当時のバンコクの夜の世界では普通に出回っていて、「私が買っておいてあげる」というゴーゴー嬢もいました。
既成タバコにマリファナを混ぜて吸う方法は、カモフラージュのもっとも簡単な方法です。

【注釈】
「Gスポット」はナナプラザ2階、現在の「レインボー5」の位置にありました。
文中の嬢が筆者にマリファナを吸わせた目的は不明ですが、結果として筆者が「必要最小限のお金」のみ所持していたのは正解!
もし「ヤッテいないのに金を取られた」と店に怒鳴り込んで大騒ぎしても、店の用心棒からブチノメサレテ終わりでしょう。
またツーリスト・ポリスに「被害届」を出しても、夜の女性と外国人旅行者とのお金のトラブルには対処してもらえません。

【7月31日(金)】ゴーゴー嬢同伴で「テーメーカフェ」初見参

「ナナプラザ」の「レインボー2」に行くと、必ず寄って来る嬢がいる。
年の頃30歳過ぎ、スタイルも顔も悪くはないが、周囲が若い嬢ばかりなので“花の盛り”を過ぎてしまった感は否めない。
俺だって「CH2」の若者たちといつも一緒に来ているのでオジサンぶりが目立っているはずだから、彼女は俺に同胞者意識を持っているのだろう(笑)

この日の彼女は、ちょっと意外な要求をしてきた。
自分は若くはなくてお客が付きにくいから、「テーメーカフェ」に働き場所を変えたいので見学に連れて行ってくれとのことだ。
ペイバー代を払ってくれればチップは要らない、その後にご飯も驕るという。
「テーメーカフェ」は未経験ゾーンだし場所も知らないから良い機会であり、しかも「チップ無しの飯付き」という好条件に迷うことなくOK。
ビキニ姿から私服に着替えた彼女は、ちょっと金回りのいいバーのチーママみたいだった。

「テーメーカフェ」に対して“ナンパ・ディスコ”の様な陽気で開放的な雰囲気を想像していたので、初めて見る現場の様子には少々肝をつぶした。
広い防空壕の様な地下の店内は、薄暗い照明の下でタバコの煙が充満し、芋の子を洗う様に男性客と春をひさぐ女たちが混淆していた。
女性陣の顔ぶれは一様に年齢層が高くて人相も良くない。
店内を周回する男性客の腕を女性陣が引っ張り声をかけるその全貌は、男が快楽を探しに来ているというよりも、女が空腹を満たす為に男という肉を貪ろうとしているようだ。
男性のどうしようもない節操の無さが、女性のおぞましいばかりの生命力に凌駕されようとしている「テーメーカフェ」、これはこれでなかなか壮観だ!

テーメーカフェ

ゴーゴー嬢の彼女が俺にしがみついてきて、しきりに出入口の方を指差している。
「もう分かったから出よう」という合図だろうが、俺はもう少し店内を観察したくなった。
どうせこっちは女連れだから、女性陣の営業も無いから気楽なもんだ。
俺たち二人はしっかりと手を握り合いながら、ゆっくりと店内を周回した。
あらためて近くで見る女性陣はとっくにゴーゴーを卒業した(追い出された?)様なメンツばかりであり、同伴している彼女へ鋭い奇異の視線を送ってくる。
バーのチーママが客と一緒に物見遊山で来やがったのだと、さぞ不愉快に思っているに違いない。

想定外の排他的な雰囲気、得体の知れない敵意を感じたのか、「テーメーカフェ」から出た彼女はかなり憔悴していた。
お茶っぴきに終わったゴーゴー嬢やMP嬢にとって、「テーメーカフェ」はその夜最後の稼ぎ場所だと聞いたことがあるが、必ずしもそうではないのだろう。
寄る辺ない心理があからさまな彼女は、明らかに「テーメーカフェ」の実態を知らなかったようである。

イサーン料理とタイ人女性

約束通り、彼女はイサーン料理の屋台でご馳走してくれた。
料理にはあまり手を付けずにビールばかり飲んでいた彼女は、やがてささやかなおねだりをしてきた。
「ツカレタ カエリマス タクシー100バーツ クダサイ」
彼女に少々意地悪をした様な後ろめたさもあり、素直に応じてあげた。
我々がひと口に「夜の女たち」と括っている世界にも、退廃が異質の退廃を拒む様な凄まじい縄張り意識や敵対心が交錯しているのだ。

つづく

【注釈】
「テーメーカフェ」は、ご存知の通り日本人客に大人気の援交カフェ。
当時は店内喫煙自由であり、時々タバコ以外の妖しい煙も!
文中通り、現在よりも照明は暗くて客を待ち構える女性陣の年齢も高く、不健全で退廃的な雰囲気が漂っていました。
女性陣の相場は、ショート1,000バーツ、ロング2,000バーツ。
日本人客にとっての魅力はゴーゴーバーやMPよりも安くて、日本語が話せる女性が多い事でした。

【プロフィール】
志賀健(シガケン)
1972年神奈川県生まれ。
元高校球児でプロ志望も断念。
ロックンローラに転身するもまたも挫折してアセアン放浪の旅へ。
以後フリーライターで食い繋ぎ、現在アセアン沈没中の生粋の不届き者。
ミレニアム前後から、日本の音楽サイト、アセアンの日本語情報紙等へ投稿経歴あり。

[連載]GIA アセアン近代史調査報告書の最新記事

コメントを残す

コメントは承認後に公開されます。

入力内容をご確認の上、送信ボタンを押してください。

カテゴリー

企画 & 特集

アーカイブ

月別一覧

年別一覧