廃墟内で営業する屋台と夜の蝶

投稿日 2017.07.14

バンコクの屋台撤去のニュースはいろいろなメディアで紹介されているので、ご存知の方が多いかと思う。

屋台撤去のニュースを聞いた際、タイ人の友達にどう思うかを聞いてみたところ、

「屋台撤去は嬉しいよ。だって歩道が歩きやすくなるからね」

と言われたことが印象に残っている。

私がタイに来たばかりの頃と比べて、ずいぶんとスクンビット通り、特にナナ駅とアソーク駅の間の屋台が減った。
しかしこの状況下の中、スクンビット ソイ7にあるバービア『BEER GARDEN 7』の手前に、夜の蝶が集まる屋台がひっそりとオープンしている。

ナナ屋台

廃墟内にある屋台

スクンビット ソイ7にあるBEER GARDEN 7の手前に、鉄の囲いがされている。
店内が見えないので見過ごしてしまいそうだ。

右隣はBEER GARDEN 7

入り口横にタイ語が書かれたボードがある。
タイの料理名が書かれているので、タイ語が読める人にはここが飲食店だとわかる。

店名は無い

以前はソイにもっと屋台があり、このお店を隔離している鉄の囲みもなかった。
数ヶ月前にこのようなスタイルになったとのこと。

入店?というのだろうか?
鉄パイプをくぐると、屋台でよく見かけるテーブルが3つと調理場があった。

メニューは無いが、食べたいタイ料理名を言えば作ってくれる。
ビールも飲め、大瓶1本100バーツ。
銘柄はチャーンビール(Chang Beer)とリオビール(LEO Beer)のみ。

屋台撤去を受けてここで手伝いをしているタイ人男性

調理場にタイ人男性がいた。
彼は以前スクンビット通りで商売をしていたが、屋台撤去を受けてここで手伝いをしているとのことだった。

そして。
調理場と食事をするスペース以外は、がらんどう。
敷地内の9割は瓦礫でいっぱいだった。

瓦礫で足場は悪い

敷地内の奥から見ると、このようにポツンと見える

集まる夜の蝶たち

廃墟内にある屋台には、夜の蝶たちが集まる。

男を捕まえれなければここで寝る

ビールを注文すると、ビールを運んできた女性が一緒のテーブルに着いてグラスに注いでくれた。
日本が少し話せ、名前はアイだと名乗った。

店員かと思ったが、アイさんも手伝いをしているとのこと。
ホール役として客にビールを注いだり、話し相手になったりしている。

「ここまで来るのに高速バスを含めてバスを4つ乗るの。時間にすると2時間くらいかな」

家はこの付近ではなく、ラマ2通りにあるそうだ。
そこまでしてここまで来る理由は、BEER GARDEN 7、もしくはこの付近で男を捕まえるため。

深夜はバスが運行しておらず、もし帰るとなるとタクシーになる。
しかし、タクシー代は高い。

「だからね、男を捕まえられなかった場合はここで寝たりしているわ」

ここ、青色の机の上で寝るとのことだ。

熟睡できるのか疑問だ

「蚊が多いから、蚊よけクリームは必須ね」

年齢を聞くと42歳。
昔は綺麗だったんだろうなとは思うが、肌からは年齢を感じる。

「スクンビット通りに日本人がたくさん行く店があるでしょう。えっと、テーメーカフェっていう。あそこは若い子ばっかりだからね…」

テーメーカフェを意識しているようではあった。
しかし、昨年だったか、リニューアルし店内が明るくなったテーメーカフェでは立てそうにない。

バイク事故で記憶喪失

別のテーブルでは、2人の女性がタイの赤酒、ヤードーンを飲んでいた。
胸元の開いた派手な服装から、風俗関係の女性だとわかる。
こちらのテーブルにやって来たので乾杯。

片方の女性は、以前プラカノンのカラオケ店で働いていたとのこと。
語学学校のソーソートーで日本語や英語を勉強していたが、バイク事故で頭を強打し、記憶喪失に。
今はここの店の隣、BEER GARDEN 7へしばしば行っているとのことだ。

会計を済ませ店を出ると、BEER GARDEN 7へと向かっていった。
なぜか足取りは、軽い。
スキップしているようでさえあった。

かすかな臭い

もう1人の女性とも話したが、会話が少しすれ違う感じがする。
私の語学力がどうこうの問題ではない。

彼女が私の前を通り過ぎるとき、かすかに臭いがした。
おそらく、その影響だろうと思われた。

レディーボーイ

黒い胸元の開いたドレスを着た人が来店してきた。
レディーボーイだと一目で分かる。
食べ物を注文し、私たちとは違うテーブルに座った。

レディーボーイを見ながら、私はあるバーのタイ人スタッフから言われた言葉を思い出していた。

「なんで日本人の男の人はレディーボーイが好きなの?」
「レディーボーイって男でしょ?…気持ち悪いわ」

性に関して寛容な国といわれているが、そういった意見があることも、確かだ。

バンコクの縮図がここか

屋台撤去と同時に、バンコクの再開発も進んでいる。
廃墟にはこの先アパートが建設予定とのことだ。
スクンビット ソイ11を入って左手にあったバーやレストランも、再開発のため今年になって移転、もしくは閉店している。
ここの屋台も撤去を余儀なくされるだろう。

街の衛生面・交通面・住みやすさ改善の一方で、そのしわ寄せを受けている人々もいる。

そしてこの鉄の囲いの内側、廃墟内の屋台に休息を求めて集まる夜の蝶たち。
年齢、事故、薬、性別と、それぞれがそれぞれに事情を抱えていた。
安息の地を光に脅かされながらも、蝶は花から花へと今宵も飛んでいく。

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