「居酒屋いもや」で食す、和製外国食の数々

投稿日 2019.11.10

和風居酒屋の特徴は、お料理の品数が豊富なこと!

お料理メニューの品数では、バンコクの居酒屋/日本食店ではナンバーワンと思われる「居酒屋いもや」。
前回新メニューをご紹介した通り、今後もさらに増え続けていくご様子だ。 「いもや」に足繁く通う私は、さらに「裏メニュー」「日替わりメニュー」「限定メニュー」も何品かご提供頂いているので、それらの数を加算するともはや他店の追随を許さないほどのお料理の数である!
先日も「限定メニュー」の一品を頂いてきたが、「料理の種類、バラエティは日本食が世界ナンバーワンなんじゃないか?」という思い付きを女将さんにふったところ、「多分間違いなし!」とのこと。

更に女将さんは「和風居酒屋の特徴は、料理メニューの品数が日本食の種類同様にたくさんあること」と言う。
お酒を飲みながら酔いや気分に任せて様々な料理を味わい、様々な物思いに耽ることが出来るのが和風居酒屋最大の特徴である。

「日本食はかくも多くの種類があるのか?」
それは我々が日本食と思い込んで親しんでいる料理も、元は外国食/外来食の場合が実に多く、日本人の口に合うように改良されて外食店料理、または家庭料理として完全に根付いているからである。
「美味しそうな外国料理は、何でも日本流にアレンジしちゃおう」
日本人のこの探求心、遊び心は偉大だ!

その「和製外国料理」が「いもや」には多い。
「外国食本来のスタイル」が、「日本に到来して改良されたスタイル」「女将さん流に改良されたスタイル」、更にお客さん用として「いもや風に女将さんがもう一度改良したスタイル」と、少なくとも三度の改良を経ていもやのメニューに登場しているのである。
その当たり前の歴史に気が付いた時に猛烈に食べたくなり、「いもや和製外国食」の多くを食してきたのでレポートをお届けします!

Part 1 ~「まぐろユッケ」「野菜餃子」「肉じゃが」「もちベーコン」

まぐろユッケ

「ユッケ」はご存じの通り韓国料理であり、戦前日本に移住してきた韓国人によってもたらされた。
何故牛生肉からまぐろに転用するアイディアが生まれたのかは不明だが、個人的には15年ほど前に日本人の某有名フランス料理シェフにインタビューした際に伺った仮説に信憑性があると思う。

そのシェフは北日本の貧しい漁村出身であり、「まともに魚肉を味わえなかった貧民たちが、魚の骨からこそぎ落とした肉をいかに美味く食べるか工夫したのがまぐろユッケやネギトロのはじまりかもしれない」とおっしゃっていたものだ。

歯応え充分の赤身マグロの角切りが提供される「いもや・まぐろユッケ」を味わっていると、日韓食文化交流の潮流をしみじみと感じる(笑)
お金は無くても豊かな発想力、工夫する意欲は失いたくない、なんて思いながら「まぐろユッケ」を食すとまた格別!

野菜餃子

 前回レポートした通り、早くも「いもや」の大人気メニューになっている一品。
餃子のルーツは中国の水餃子であり(中国には元来焼き餃子は無い)、日本での歴史は意外と浅く、終戦後中国からの引き揚げ者によって日本国内にもたらされたそうだ。
また中国では水餃子を主食として食する地域もあり、概して皮は厚目。 それが日本では皮を薄目にしたり焼き餃子に改良されて今日に至っている。

「いもや」の「野菜餃子」は薄目の皮に「野菜6:肉4」の割合。
写真の通り大ぶりな5つが羽根つきで登場。 もうこれだけでお腹が満足できるボリュームだ!
羽根を付けたのは勿論焼き餃子を思い付いた日本人であり、日本人の豊かな発想力を象徴するようなスタイルといえよう。

肉じゃが

一時期日本では「独身男性が女性に作ってもらいたい家庭料理No.1」という都市伝説があったお馴染みの家庭料理。
また肉じゃがにはもうひとつの都市伝説もある。 そのルーツは海軍軍人の東郷平八郎が留学先のイギリスで食べたビーフシチューの味を気に入り、帰国後に艦上食として作らせようとしたが、料理長はビーフシチューを知らず、東郷の話からイメージして醤油と砂糖を使って作ったのが始まりとのこと。
「汁無しシチュー」みたいに出来上がったのか?と楽しく想像してしまう!

「いもや」スタイルの肉じゃがは、「肉じゃが肉」と言ってしまいたいほど牛肉が多くてボリューム感あり!
お味は薄味の「大和煮」的で完全な和風味であり、器の中の煮汁の量も程よく、これは時間をおいてもじゃがいもが崩れない配慮かもしれない。

もちベーコン

串焼きメニューの中でちょっと異色の「もちベーコン」。
もちとベーコンのコンビネーションの発案者は多分「いもや」の女将さんであろう!
口の中でもちとベーコンが絡み合うことでベーコンのうま味がより広がっていく妙味を楽しむことができる、小品にして「洋風と和風」のナイスアイディアな逸品!

Part 2 ~チーズ料理

チーズの日本伝来、普及の歴史を調べてみたら意外!
明治の文明開化とともに伝来されたものの長らく日本人の口に合わずに普及せず、一般化していったのは1970年代になって起こったピザやチーズケーキのブームからとか。
チーズはお酒を飲む前に食しておくと酔いの進行を遅らせたり悪酔いを避けられる効果があるとされるので、居酒屋でもチーズ類が用意されている場合が多い。

「いもや」は女将さんの工夫によって独創的で美味しいチーズ料理が用意されている。

油揚げチーズ

上記の「もちベーコン」と並ぶ「いもや」独自の、小品にして洋風と和風のナイスアイディアな逸品。
油揚げの中にとろ~りチーズがたっぷり!
最初は油揚げとチーズの食べ合わせが想像出来ないものだが、ちょっと醤油をたらすとなかなかのコンビネーションを発揮!

じゃがチーズ焼き

細切りポテトを炒めた上にたっぷりとチーズがのせられたボリューム満点のポテト&チーズ料理。
西洋料理店でも同系料理がよく用意されているが、「いもや」ではオリジナルのタレ(酢醤油風)を付けて食すので完全な和食風料理となってお箸が止まらない!

牛肉チーズ焼き

甘辛く煮たスライス状の牛肉の上にチーズがのせられてボリュームも栄養価もたっぷり!
「牛肉は牛肉だけでガッツリいきたい」という方は、チーズとの相性にビックリかも。
牛肉は明治初期に関西では神戸港から(関東では横浜港から)西洋人によってもたらされたが、当時はまずは醤油とザラメで牛肉を焼いて食す元祖「すき焼き」スタイルだったらしい。
「いもや」オリジナルの煮ダレによって調理されているこのメニューの牛肉のお味は、元祖「すき焼き」風かもしれない!?
その濃厚なお味を、さらにチーズがほどよく緩和するお役目を担っている。

Part 3~コロッケ

「肉屋のコロッケが一番うまい」との定説は有名だが、「バンコクのコロッケはいもやが一番うまい」!

クリーミー系コロッケは、ひと口で全部を頬張った場合の中身のとろみと衣のサクサク感との口の中での一体感、いもガッツリ系コロッケは逆にいもと衣との喧嘩具合!?をコロッケの美味さのポイントとするならば、いもやコロッケは満点!

牛タンカレーコロッケ

いもガッツリ系コロッケの中でもっとも独創的で人気の一品が「牛タンカレーコロッケ」。
いもの中にカレー粉を入れる発想は日本人だが、「いもや」は細切りした牛タンがたっぷり。
牛タンのつなぎとしていもが使われているといってもいいだろう。
オーダーが入ってから調理されるので、いつもホクホク!
その他、牛タンコロッケ、イカミンチコロッケをあり。

エビクリームコロッケ

日本では大正時代にクリーミー系コロッケの方がいもがっつり系コロッケよりも先に広まっていったらしいが、いもやでも「エビクリームコロッケ」は開店当初から人気だったとか。
お皿に盛られているお姿は、いまにもクリームが飛び出してくるよう!

 

Part 4~トンカツ&ハンバーグ

トンカツ

カレーライス、コロッケと並ぶ大正時代の三大洋食である「トンカツ」。

現在の様な3センチほどの厚さに揚げられ、切り分けられて客に出されるスタイルは昭和初期の東京・御徒町の某店が発祥らしいが、その当時のとんかつの写真をネットで探して見てみると衣が結構厚くて見た目も重厚。

まだ日本全体が豊かではなかったので、さぞかし豪華に見えたことだろう。

「いもやトンカツ」は衣の色も厚さもスマートで洗練された揚げ具合で、写真の通り赤ワインとも合そうな「オシャレなとんかつ」。

柔らか過ぎないタイの豚肉を特性を活かした様な火の通り具合がよく、見た目よりは食べ応えがあるのが特徴である。

ハンバーグ

スパゲティ・ナポリタンやオムライスとともに、明治時代中期に日本へ渡来して瞬く間に広がった大人気外国食の様に伝わっているが、実は日本で一般的に食されるようになったのは1960年代の高度成長期とか。

安価な合い挽き肉でも可能な調理法、豪華な見かけ、ソースにも醤油にも相性が良く、また調理済みで後は焼くだけの製品が発売されたことがハンバーグ・ブームに繋がったという。

一方では香辛料やつなぎのパン粉や玉ねぎのみじん切りの使い方や焼き具合で味が大きく変わるので、ハンバーグの出来不出来で主婦の料理の腕が分かると言われたそうな。

「いもやハンバーグ」は、サイズは男性の大人のこぶしそのもので、みるからに牛肉と肉汁が凝縮している感じで食欲をそそることこの上なし。

上質の挽肉のお味そのものを堪能出来るようにつなぎが少な目でまさに「ハンバーグステーキ」そのものである。

そのままスライスにしてパン類に挟み込めば、極上ハンバーガー、極上ハンバーグサンドイッチである!

ハンバーグが日本に渡る前、1800年代後半のハンバーグはつなぎが少なく、アメリカのフィラデルフィアでは「ハンバーグステーキ」と呼ばれていた記録が残っているので、「いもやハンバーグ」は約150年前のフィラデルフィア・ハンバーグに近いのかもしれない!

 

Part 5~ピザ

いまや和製外国食の仲間入りを果たしたピザ。
料理における日本人の豊かな発想力、改良力がまたまた西洋人を驚かせていることだろうが、「いもやピザ」の発想力はそんじょそこらのピザ屋さんが仰天するような「超絶いもや流」。
写真の通り、ピザ生地に収まり切らないほど盛られた具材の量も凄いが、お味は女将さんのオリジナル。
ソースはちょっと和風?ちょっと韓流?懐かしいようで斬新で、それでいてピザソースとして成立!

メニュー名は「コーンピザ」「しらすとネギのピザ」「ツナ&オニオン・ピザ」と普通だが、“隠し具”“隠し調味料”満載な「ピザ革命状態」!

ピザ発祥のイタリアでも、最初の継承地とされるアメリカでも、地方によって様々なスタイルのピザが存在するらしいが、「斬新で美味しいピザを食べてみたい」という方は「いもやピザ」を食すべし!

Part6~ご飯もの

たまごチャーハン

ポピュラーな和製外国食の中でもっとも渡来の歴史が古いと言われるチャーハン(炒飯)。

遥か昔、遣隋使/遣唐使の時代に日本へ伝承された料理とのこと。

遣隋使/遣唐使といえば、当時は命がけの渡航だったと言われるだけに!?、また「炒飯の味で中華料理店の質が分かる」と言われるだけに、心して「いもやチャーハン」にトライ。

ご飯硬め、油少な目、具材の肉の脂じわり、そして天辺から温かみが押し込められた様な炒め具合を好む、私のような煩いチャーハン狂いには「いもやチャーハン」は申し分のないお味!

食した日の塩加減がやや薄目だったので、これならサイドメニューとしての野菜炒めや餃子との相性もバッチリ。

カレーライスにしてもチャーハンにしても、庶民が外食で求める最大公約数的なお味と家庭料理的独自のアレンジとの両立した「いもやマジック」が横溢。

カレーライス

その昔「インド人もびっくり!」という有名なカレーのCMがあったが、カレーを日本に伝えたのはインド人ではなくて、インドを植民地としていた時代のイギリス人。
日本で独自の改良が進み、今や日本人の「国民食」とまで言われるほど人気の高いカレーだが、「いもやカレー」や如何に?

実はものの2~3分で完食!
昔懐かしい街角の喫茶店のカレーでもなく、「カレーにして~ね、かあさん!」の有名ブランドのルー的もない、もっと高級なお味がするけれども一気食いを止められない“やみつき”カレーだ。
強いて言えば、カレー名人だった私のお袋のカレーを一晩寝かせて、翌朝牛乳を加えて新しい熟成をもたらした様なカレー。
辛味、甘味、とろみが一体になってもたらす“うま味”がルーに行き渡り、ひと口食すると口内に絶妙な幸福感がやって来ます!
辛味の質、具材の出汁加減といった一般的なカレーの判断基準を超越した次元で味わうのが「いもやカレー」。

いもやのメニューに無い和製外国食は、もはや「シチュー」「ナポリタン」「オムライス」ぐらいか!?
「そこまでやっちゃうと、定食屋さんになっちゃうでしょっ!」と女将さんは笑っていらしたが、その笑顔の陰で密かにメニュー化が進められているんじゃないか?と勝手な期待が大いに膨らんでしまうが、まずは「居酒屋いもや」既存の「和製外国食」を堪能してほしい。
お袋さんや恋女房の手料理とはまた別次元の幸福感に包まれることだろう。
「和製外国食」は我々日本人の血肉と情緒を形成してくれた料理であり、その存在価値と美味しさそのものが「居酒屋いもや」によって守り抜かれているからである。

もし今夜の食事メニューが思い浮かばなかったり、食欲がなかったりしたら、迷わず「いもや」へ!
遠路はるばる、歴史の彼方からやって来た外国食があなた好みのテイストとなって降臨してくれるはずだ! 

「居酒屋いもや・インフォメーション」

【いもや本店】
■アドレス 1F Sachayan Mansion, 42/3 Soi Sukhumvit 53
■アクセス BTSトンロー駅から徒歩6分(駐車場あり)
■電話番号 02-279-0473
■営業時間 月-金 18:00-1:00 (L.O.0:15), 土日祝 17:00-0:00 (L.O.23:15)
※「いもや本店」は、店内改装の為11月17~30日はお休みです。
【いもや2号店】
■アドレス 3F Terminal Shop Cabin Mansion, 2/17-19 Sukhumvit 24
■アクセス BTSプロンポン駅から徒歩2分
■電話番号 02-258-4955
■営業時間 月-金 18:00-1:00 (L.O.0:15), 土日祝 17:00-0:00 (L.O.23:15)

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